アチラガワヘノドア
2年半前、母は緩和ケア病棟に入った。
緩和ケアの担当医師に「あなたのお仕事は?」と聞かれ
「絵を描いています」と答えた。
「では、心を和らげる絵を描いて、病室に飾ってあげたらいかがでしょう。」と言われた。
はい。と答えたものの結局、絵を描くことはできなかった。
緩和ケアは、症状が落ち着いて退院される方もいらっしゃる一方、
やはり死に向き合う患者さんが多い。
死にゆく母の心を和らげる絵ってどんな絵なんだろう。
大変な宿題をいただいたと感じた。
ある本に、理想的な死とはアチラガワの世界にひらりと飛び移る感じなのでは。と書いてあった。
もしそうであるなら、アチラガワノドアへの目印のようなものを近くに置いておけばよかった。
そこは光に包まれているのだろうか。心地よいのだろうか。